近視で視力が悪くなっている場合、角膜の形を少し変形させると視力が回復することが知られています。
これは、角膜がドーム状の形をしており、強い凸レンズの働きをしているからです。
この角膜のドーム状が少し平坦になると角膜の光を曲げる力が減る(凸レンズとしての強さが弱まる)ので、近視が軽くなるのです。
どれだけ平坦にすればどれだけ視力が良くなるということをきちんと計算すれば、視力が1.2以上という回復も出来るのです。
「オルソケラトロジー」とは、角膜を平坦にする特殊なハードコンタクトレンズを夜はめて寝るという治療です。朝起きてこのコンタクトを外すと角膜が平坦になっていて、よく見えるというものです。(入れていても見えるので、夜中のトイレもメガネなしで大丈夫です。)
はじめのうちは、夕方になると角膜の形状が元に戻ってしまうので視力が低下してきますが、また夜にこのコンタクトをして寝ると次の朝にはまた良い視力になっています。これを毎日繰り返しているとだんだん視力が安定し持ちが良くなってきます。
(注)このコンタクトは普通のコンタクトレンズとは違いますので、皆さんが持っているコンタクトでつけたまま寝ることはしないで下さい。朝起きて視力が良くなるどころか痛くて目が開かなくなります。
このレンズは酸素をよく通す素材で作られています。また、レンズはその人の目に合った形状のものをオーダーして取寄せますので安全性が高いです。レーシックは角膜を削り取ってしまうため、手術後の不具合があっても元には戻せません。その点、オルソケラトロジーは止めれば元に戻るのでちょっと安心感があるのかもしれません。
メガネやコンタクトレンズがわずらわしい
仕事の都合上メガネ使用が困難だったり「時間がたつとゴロゴロする」「夕方になると充血しがち」等、コンタクトレンズ特有の不具合を解消したい方へ。
裸眼でスポーツを楽しみたい
野球・サッカー・テニス・水泳・サーフィン・スキューバーダイビング等のスポーツをされる方へ、裸眼で安全にスポーツを楽しむことができます。
外科的なレーシック手術等に抵抗がある方へ
「手術はこわい」「術後の感染症が不安」という方。オルソケラトロジーなら装用を中止すれば角膜は元の形に戻りますので安心です。
近視進行の抑制効果がある?
オルソケラトロジーを継続すると、近視の進行が抑制できるという報告が多く言われています。特に仮性近視の方や、角膜が柔らかい若年層の方に効果があるようです。遺伝や環境が要因となり強度近視になるおそれのある方にも良いと思われます。あくまでも進行のスピードを緩やかにする可能性があるというもので基本的に近視は進むことが多いです。効果がない方もおられるので保証はできません。
取り扱い方法は
レンズの取り扱いは一般のハードコンタクトレンズと同様です。 また、夜間装用なので、日中装用のようにホコリやゴミなどが目に入ることもなく目への負担やレンズを破損・紛失するリスクも少なくなります。
「角膜感染症」
オルソケラトロジー治療で使用するコンタクトレンズは、いわゆる酸素透過性のハードコンタクトレンズです。コンタクトレンズの洗浄を十分に行われていない場合や、レンズケースの清潔が保たれていない場合、角膜感染症を起こすことがあります。なかでも、緑膿菌やアカントアメーバーによる感染では、視力低下や重篤な場合失明にもつながることがあります。充血や異物感、痛みは危険信号です、症状が出た場合はレンズの装用を中止して、早急に診察を受けてください。
この角膜感染症は通常のハードコンタクトレンズでも起こりうるもので、オルソケラトロジーのレンズに特有のものではありません。しかし、オルソケラトロジーのレンズは通常のレンズとはその形状が異なるため、洗浄が不十分になりやすいです。コンタクトをはずすのは、朝の忙しい時間ではありますが、きちんと洗浄する習慣をつけてください。レンズケースはコンタクトをはめた際に流水で洗浄し、就寝中は乾燥させるようにしてください。さらに、3ヶ月ごとにケースを新しいものに交換してください。
視力が安定するまで見え方が変動することがあります。
夜間にまぶしかったり、にじんで見えたりする可能性があります。(ハロー・グレア)
オルソケラトロジーは、アメリカで30年以上前から研究・施術され、現在、アメリカ・ヨーロッパ・アジアを中心に、世界各国でその安全性と効果が認められ、実施されております。
レーシック等の外科的手術と異なり、レンズの装用を中止すれば、角膜の形状は元に戻りますので、安心してお使いいただけます。
また、日中装用のコンタクトレンズとくらべても、夜間の装用なので、ほこり等が目に入ったりせず、レンズを紛失する心配も減るなど、安全・快適にお使いいただくことが出来、リスクは一般のコンタクトレンズと同等またはそれ以下となります。
*内容変更しました。2019.11
●取扱いオルソケラトロジーレンズ
オルソケラトロジーの治療は自費診療となり、健康保険は使用できません。
*眼障害を発生させないために、3カ月毎の定期受診可能な方が治療対象となります。
●開始から半年間の治療費:150,000円(税別)
この治療費に含まれるもの
●治療開始半年以降の定期検査料
1,900円(税別)/3ヶ月毎
●ケア用品・その他
●破損紛失や度数変更時の再購入費用
1枚:32,000円(税別)
注文キャンセル
メニコンオルソK・・30日間
東レブレスオーコレクト・・1週間(お試し期間内まで)
治療を続けるのが難しい、あまり見えない、医師の判断等で治療を中止する場合。
処方交換
メニコンオルソK:45日以内は左右各1回ずつ交換注文可能。
東レブレスオーコレクト:6カ月以内は左右各1回ずつ交換注文可能。
破損保証1年(両レンズ共に)
左右各1回ずつ新品のレンズに交換することができます。
破損したレンズを半分以上持参していただく必要があります。
※紛失は保証対象外です。取り扱いには十分ご注意下さい。
治療中に眼球の状態によっては、医師の判断でレンズの装用を中止し、点眼等の薬剤投与を行う場合があります。
10万円を越した費用は補助が得られます。
医療費控除の対象になりますので、詳しくはこちらの国税庁による回答ページをご覧下さい。
現在コンタクトレンズをご使用の方は、オルソケラトロジーの適応検査時に正確な黒目の形状を測定することが難しいです。そのため検査前に以下に示したコンタクトを使用しない期間を設けていただくようになります。
○ハードコンタクト使用者:1-2週間
○ソフトコンタクト使用者:2,3日
○乱視用ソフトコンタクト使用者:1-2週間
○現在まで他院でオルソ治療をしていた:
・現レンズとレンズデータがあれば調整できる可能性あり
・データ不明の方:定期検査の引き継ぎは可能だが、レンズ作り直しの場合は2-3週間レンズ使用せず裸眼から検査が必要
Q.オルソケラトロジー治療はどんな人に向いていますか?
A.スポーツをしている人や、日中裸眼で過ごしたい方、またコンタクトレンズは乾燥して向かない人などが適応ですが、適応度数がある程度決まっており中等度近視(-1.00~-4.00D)と軽度乱視(-1.00D程度まで)が適応です。高度近視、遠視、中等度以上の乱視などは適応外になります。また、レーシックをしている人や夜間時の運転が多い人(グレアハローがあるため)も適応外となります。
Q.オルソケラトロジー治療のお試しはできますか?
A.可能です。東レブレスオーコレクトは1日お試しや1週間お試しがあります。また、メニコンオルソKではレンズは注文にはなりますが、30日以内のキャンセルが可能なので、お試し期間として治療を試すことができます。
Q.強い近視なのですが、治療を受けることはできますか?
A.近視度数がS-5.00D以上の方は1.0以上の視力を望むのは難しいです。(通常適応はS-4.00までとされています。) ある程度の視力さえあれば良いなどの条件があれば適応と思います。オルソである程度近視矯正して、眼鏡やコンタクトレンズで残った近視矯正をしたり、職業上裸眼視力が0.1以上なくてはいけない、という方がされることもあります。
Q.レーシックなどの手術とは何が違うのですか?
A.レーシックなどは角膜を削って矯正をするもので目を元の状態に戻すことができません。オルソケラトロジーはコンタクトで角膜を扁平化させて矯正をしているので、治療を辞めてしまえば元の眼の状態に戻るのでデメリットでもありますが、それがメリットともなり安心です。
Q.レンズの寿命(耐用年数・使用期限)はどれくらい?
A.レンズの寿命は3年程度です。丁寧に使用していても細かい傷が出来るので衛生面でも3年程度で交換するのが望ましいです。
Q.レンズの左右はどのように見分けますか?
A.レンズに刻印があるのでそれを見て判断する方法と、メーカーによっては左右で色が違うものもあるので見分けることが可能です。
Q.レンズを装用すると、痛いですか?
A.オルソケラトロジーはハードコンタクトレンズに分類されるので、初めて入れたときはゴロゴロとして違和感があると思われます。しばらくするとほとんどの方はなれてきます。また、まばたきをする日中ではなく目を閉じたままの睡眠時の利用のためそこまで気にならないと思われます。
Q.レンズの保証はありますか?(キャンセル・破損・紛失・交換)
A.各メーカーで保証期間が設けてあるので保証期間内であれば左右各1回まで破損交換(割れた1/2以上の持参が必要)、度数交換は可能です。キャンセルは出来るメーカーと出来ないメーカーがあるのでお試し期間で十分に考慮していただき、治療を継続するかどうかを決めていただきます。紛失に関しては保証がないのでなくさないように注意してください。
Q.いろいろなケア用品があるけど、どれを使っても良いの?何か必要?
A.ガイドラインでは界面活性剤によるこすり洗いに加え、ポピドンヨード剤による消毒が推奨されています。当院ではガイドラインに記載されている洗浄液でレンズのケアをして頂くようにしています。全てのハードコンタクト用洗浄液を使用しても良いわけではなく、たんぱく除去剤など使用できないものもありますので使用する場合はお問い合わせください。また市販の洗浄液に添付されているレンズケースはオルソケラトロジーのレンズは適応していないので使用しないようにしてください。レンズの変形の原因になります。
Q.どうして夜にコンタクトレンズを装用すると、近視が矯正できるのですか?
A.目の角膜(黒目)をコンタクトレンズを装用して、目を閉じている状態にすることで角膜がおさえられて扁平化し、一時的に近視が矯正されるという治療方法になります。
Q.効果があるのは近視だけですか?
A.中等度近視と軽度乱視になります。遠視は矯正できません。
Q.レンズを装用した状態で夜中に起きた時は目は見えますか?
A.オルソケラトロジーのレンズに度数が入っているのでレンズを装用している状態でも見えます。
(夜中トイレに行く場合、レンズを便器に落とさないように注意しましょう。)
Q.治療を始めて、効果はどのくらいであらわれますか?
A.近視の度数等で個人差はありますが約1週間くらいで夕方まで見えるようになると思われます。
Q.一晩で何時間、レンズをつけなければいけませんか?(就寝時間)
A.最低でも5~6時間の睡眠時間を取る必要があります。睡眠時間が短いと矯正効果が低く、翌日の見え方に影響します。
Q.通院の頻度はどのくらいですか?
A.治療開始してすぐは来院頻度が多く、治療開始後3か月程度たてば経過によりますが3か月毎の定期検査になります。
Q.定期検査に来院するときはレンズを装用していきますか?
A.定期検査時はレンズを外して来院し、レンズの傷汚れチェックのためご持参いただきます。
Q.レンズは毎晩装用する必要がありますか?
A.基本的に毎晩装用していただくようになります。
Q.旅行や部活の合宿中は装用をしないですごしてもいいですか?
A.装用を一旦中止することは可能ですが、中止すると徐々に元の角膜の状態に戻るのでオルソケラトロジー治療開始前の見え方になります。
Q.装用中に違和感を感じたら?
A.レンズ装着時に目とレンズの間に空気が入っている場合やレンズが角膜の上にしっかり載っていない場合など違和感があることが多いので、一度レンズを外して再度入れなおしてみてください。それでも違和感があるようであれば左右のレンズの入れ間違いなども考えられます。
Q.装用中に眼をこすってしまいました。どうすればいいですか?
A.レンズを外した時に痛みやゴロゴロとした違和感はないか、充血などの確認してください。
少しでも違和感があるようなら眼科受診をしてください。
Q.レンズは左右同じものですか?
A.眼に合っているカーブや度数をみてレンズ選択をするので左右で異なることが多いです。
Q.オルソケラトロジーレンズを使用して起こる合併症はありますか?
A.一般的なコンタクトレンズと同じ合併症は起こりえます。
Q.オルソケラトロジー治療中の運転免許の取り扱いはどうなりますか?
A.警察庁交通局運転免許課からの通達にると、オルソケラトロジーレンズ治療中の方は、運転免許取得、更新時の視力検査に裸眼で合格していても、運転免許証の『免許の条件等』には『眼鏡等』と記載されます。また視力検査時には、検査担当者にオルソケラトロジーレンズを使用している旨を申告しなければなりません。当院ではオルソケラトロジー治療中であることを記載したカードをお渡ししていますが、基準の視力が得られていない状態で裸眼で運転すると、免許の条件違反となります。
*注意*メニコン「プロージェント」は東レ「ブレスオーコレクト」には使用できません。
学会等での発表では、メガネの人と比べると半分ほどしか近視が進まなかったという話もありました。
また、日本で行われた2年間の研究では、オルソケラトロジーによる単独治療と低濃度(0.01%)アトロピン点眼治療を併用した場合の近視進行について報告がありました。どちらも近視進行抑制効果があるといわれている治療ですが、2年間治療を行った結果、オルソ単独治療と比べて低濃度アトロピン治療と併用した方が、近視進行に影響する眼軸(目の長さ)の伸びが28%抑制されるという結果でした。その中でも近視の程度が軽い方はオルソと低濃度アトロピンの併用が効果的であり、中等度以上の近視となると併用しても効果は上がらず、オルソ治療単独でもよいというものでした。
オルソと低濃度アトロピンを併用した近視の治療は、軽度近視の児童に対しての近視の進行を抑える治療として、最も効果的な選択肢になりうるという結論でした。
【2020年末追記修正】