翼状片は、白目の組織が黒目に向かって伸びてくる病気です。初期症状は軽微ですが、放置すると視力低下や乱視を引き起こす可能性があります。翼状片の原因、症状、治療法、手術について解説します。

- 翼状片とは?

- 翼状片の原因と症状

- 翼状片の治療法

- 翼状片の手術について

- まとめ

翼状片(よくじょうへん)とは

翼状片の定義と特徴

翼状片とは

翼状片は、結膜(白目)が角膜(黒目)に向かって侵入してくる病気です。初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると異物感、充血、視力低下などを引き起こすことがあります。


翼状片は、一般的に鼻側の結膜から角膜に向かって三角形状に伸びてくることが多いです。しかし、まれに耳側から発生することもあります。個人差があるので様々な方向で起こり得ます。翼状片の表面には血管が豊富に存在し、充血しているように見えることがあります。


翼状片の進行速度は個人差が大きく、長年かけてゆっくりと進行する人もいれば、比較的短期間で進行する人もいます。進行の程度によっては、角膜の形状を変化させ、視力に影響を与える可能性があります。


翼状片の診断は、細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう)という特殊な顕微鏡を用いて行われます。これにより、角膜や結膜の状態を詳細に観察し、翼状片の有無や進行度合いを正確に判断することができます。


翼状片は、良性の病気であり、癌(がん)化することはありません。しかし、進行すると視力に影響を与えるため、適切な治療が必要です。定期的な経過観察と、必要に応じた治療を受けることが大切です。

翼状片と間違えやすい病気

翼状片と似た症状を示す病気には、瞼裂斑(けんれつはん)などがあります。瞼裂斑は、結膜が盛り上がったもので、翼状片のように角膜に侵入することはありません。自己判断せずに眼科医の診断を受けましょう。


瞼裂斑は、結膜が紫外線などの刺激を受けて変性し、黄色く盛り上がった状態を指します。翼状片と異なり、角膜への侵入は見られません。しかし、炎症を起こすと充血や異物感を伴うことがあります。


また、結膜弛緩症(けつまくしかんしょう)も翼状片と間違えやすい病気の一つです。結膜弛緩症は、結膜がたるんでシワになり、目の表面に覆いかぶさる状態を指します。翼状片のように角膜に侵入することはありませんが、異物感や涙目を引き起こすことがあります。


翼状片、瞼裂斑、結膜弛緩症はいずれも、紫外線や乾燥などの環境要因が関与すると考えられています。これらの病気を区別するためには、眼科医による詳細な検査が必要です。自己判断せずに、専門医の診断を受けるようにしましょう。


眼科医は、細隙灯顕微鏡検査などを用いて、結膜や角膜の状態を詳細に観察し、正確な診断を行います。また、視力検査や屈折検査を行い、視力への影響を評価します。必要に応じて、角膜形状解析検査を行い、角膜の形状を詳しく調べることもあります。

翼状片の好発年齢と性別

翼状片は、40歳以上の方に多く見られ、男性に多い傾向があります。特に、屋外で活動する時間が長い人に発症しやすいことが知られています。


翼状片の発症リスクは、年齢とともに上昇します。これは、長年にわたる紫外線曝露の影響が蓄積されるためと考えられています。40歳以上の方だけでなく、若年者でも、紫外線対策を怠ると翼状片を発症する可能性があります。


男性に多い理由としては、一般的に男性の方が女性よりも屋外で活動する時間が長く、紫外線に曝露される機会が多いためと考えられています。また、女性は日焼け止めクリームや帽子などの紫外線対策を積極的に行う傾向があることも、影響しているかもしれません。


職業によっては、翼状片の発症リスクが高まることがあります。例えば、農業、漁業、建設業など、屋外での作業が多い職業に従事する人は、紫外線に曝露される機会が多く、翼状片を発症しやすい傾向があります。


翼状片の予防のためには、紫外線対策が非常に重要です。日差しの強い時間帯は外出を避け、外出する際は、帽子やサングラスを着用するようにしましょう。

翼状片の原因と症状

翼状片の主な原因

翼状片の主な原因は紫外線と考えられています。紫外線に多く当たっている人に起こりやすいと言われており、特に波長の短い紫外線B波は、角膜や結膜に炎症を引き起こし、翼状片の発生を促進する可能性があります。そのため、屋外で長時間サングラスなどをかけず仕事している方などは、発症のリスクが高くなります。長期間にわたる紫外線曝露は、翼状片のリスクを高めるため、仕事の内容によっては予防が難しい場合もありますが、可能な限り注意することが大切です。


その他、乾燥、ほこり、風なども翼状片の発生に関与すると言われています。


乾燥も、翼状片の発生に関与する要因の一つです。涙の量が不足すると、目の表面が乾燥し、結膜が刺激を受けやすくなります。乾燥した状態が続くと、結膜の細胞が変性し、翼状片が発生する可能性があります。


ほこりや風も、目の表面を刺激し、炎症を引き起こすことがあります。特に、風の強い日や、ほこりの多い場所では、目を保護することが大切です。ゴーグルやサングラスを着用することで、ほこりや風から目を守ることができます。


また、長年ハードコンタクトレンズを使用してきた方なども可能性はあります。白目の部分に刺激がかかる分だけ、翼状片を発症する可能性は上がると考えられます。(ただし、ハードコンタクトレンズを使用し、かつ太陽の下で長年仕事をしていたからといって、ほとんどの人に翼状片ができるわけではありません。あくまでも可能性が高くなるという話です。)


翼状片の発生には、遺伝的な要因も関与すると考えられています。家族に翼状片を発症した人がいる場合、自身も翼状片を発症するリスクが高まる可能性があります。しかし、遺伝的な要因だけで翼状片が発症するわけではなく、環境要因との組み合わせが重要です。

翼状片の自覚症状

翼状片の初期症状としては、目の異物感、充血、かゆみなどがあります。


翼状片が小さいうちは、自覚症状がないこともありますが、進行すると、白目が黒目に侵入し、乱視が出てきて視力の低下につながることがあります。そのまま黒目の中心まで白目が侵入してしまうともっと視力が落ちてくることがあります。


翼状片が大きくなるにつれて、目の表面を覆うため、異物感を感じるようになります。異物感は、翼状片がまばたきの際に角膜を刺激するために起こります。また、凹凸の具合によってはゴロゴロしたり違和感が出てくることもあります。


充血は、翼状片の表面にある血管が拡張するために起こります。炎症が強いほど、充血もひどくなる傾向があります。充血は、見た目にも気になる症状であり、患者さんのQOL(生活の質)を低下させる可能性があります。その他にも充血も出やすく、黒目も白目によって形が丸ではなくなってしまい見た目に目立つので気にされる方も多いと思います。


かゆみは、翼状片による炎症や、アレルギー反応によって起こることがあります。かゆみを我慢できずに目をこすってしまうと、症状が悪化する可能性があります。かゆみが強い場合は、眼科医に相談し、適切な治療を受けるようにしましょう。


翼状片が進行すると、白目が黒目に侵入することで角膜の形状が変化し、乱視を引き起こすことがあります。乱視になると、ものがぼやけて見えたり、二重に見えたりすることがあります。乱視が強くなると、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても、良好な視力が得られないことがあります。

翼状片が進行するとどうなる?

翼状片が進行すると、角膜の形状が変化し、乱視が強くなることがあります。また、翼状片が瞳孔(黒目の中心)にまで達すると、視力低下を引き起こす可能性があります。


翼状片が角膜に侵入するにつれて、角膜の表面が不規則になり、光が正常に屈折しなくなります。その結果、乱視が発生し、視力が低下します。乱視の程度は、翼状片の大きさや形状によって異なります。


翼状片が瞳孔にまで達すると、光が網膜に到達するのを妨げるため、視力低下がより顕著になります。翼状片が瞳孔を完全に覆ってしまうと、ほとんど視力を失ってしまうこともあります。


翼状片が進行すると、角膜に炎症を引き起こし、角膜潰瘍(かくまくかいよう)を発症するリスクが高まります。角膜潰瘍は、角膜に傷がつき、感染を起こした状態を指します。角膜潰瘍は、激しい痛みや視力低下を引き起こす可能性があり、早急な治療が必要です。


翼状片が進行すると、美容的な問題も生じます。翼状片が大きくなると、見た目が気になるようになり、社会生活に支障をきたすことがあります。翼状片の治療は、視力改善だけでなく、美容的な改善も目的として行われることがあります。翼状片が疑われる場合は、早めに眼科を受診し、適切な診断と治療を受けるようにしましょう。

翼状片の治療法

翼状片の保存的治療

翼状片の初期段階では、炎症を抑えるための点眼薬や、乾燥を防ぐための人工涙液などが用いられます。これらの治療は、症状の進行を遅らせる効果が期待できます。


点眼薬には、ステロイド点眼薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)点眼薬などがあります。ステロイド点眼薬は、炎症を強力に抑える効果がありますが、副作用のリスクもあるため、医師の指示に従って使用する必要があります。


人工涙液は、目の乾燥を防ぎ、目の表面を潤す効果があります。人工涙液は、市販薬として入手することもできますが、症状が改善しない場合は、眼科医に相談するようにしましょう。


翼状片の進行を遅らせるためには、紫外線対策が非常に重要です。外出する際は、帽子やサングラスを着用し、日焼け止めクリームを目の周りにも塗るようにしましょう。


また、乾燥を防ぐために、加湿器を使用したり、意識的にまばたきをしたりすることも有効です。コンタクトレンズを使用している場合は、長時間装用を避け、こまめに休憩を取るようにしましょう。


保存的治療は、翼状片の根本的な治療法ではありません。翼状片が進行し、視力に影響を与える場合は、手術療法が検討されます。

翼状片の手術療法

翼状片が進行し、視力低下や乱視が著しい場合には、手術療法が検討されます。手術では、翼状片を切除し、結膜を移植する方法が一般的です。


翼状片の手術は、局所麻酔で行われます。手術時間は、30分から1時間程度です。手術中は、痛みを感じることはほとんどありません。


翼状片を切除する際には、角膜に傷がつかないように、慎重に剥離します。翼状片を切除した後は、自身の結膜で欠損部分を埋めます。


手術後は、感染症予防のための点眼薬を使用し、目を保護する必要があります。また、定期的な経過観察を受け、再発の兆候がないかを確認することが大切です。

手術後の注意点と合併症

手術後は、感染症予防のための点眼薬を使用し、目を保護する必要があります。また、再発のリスクがあるため、定期的な経過観察が重要です。合併症としては、再発、感染、角膜混濁などが挙げられます。


手術後は、医師の指示に従って、点眼薬を正しく使用することが大切です。点眼薬を指示通りに使用しないと、感染症のリスクが高まる可能性があります。


目をこすったり、ぶつけたりしないように注意しましょう。手術後しばらくは、目を保護するために、保護メガネを着用するのもよいでしょう。


術後、再発しにくいような手術を心掛けていますが、再発の可能性は高めです。また再発した場合、前回よりも悪くなりやすい傾向にあります。再発を予防するためには、紫外線対策を徹底することが重要です。


感染は、手術後の合併症の一つです。感染を起こすと、目の痛み、充血、目やになどが生じます。感染が疑われる場合は、すぐに眼科医を受診しましょう。


角膜混濁は、手術によって角膜に傷がついたり、炎症が長引いたりすることで起こることがあります。角膜混濁がひどい場合は、視力低下を引き起こす可能性があります。


手術後の経過は、個人差があります。何か気になる症状がある場合は、自己判断せずに、眼科医に相談するようにしましょう。

翼状片の手術について

手術のタイミング

手術のタイミングは、翼状片の進行度合い、自覚症状の程度、視力への影響などを考慮して決定されます。医師とよく相談し、最適なタイミングを見極めることが大切です。


翼状片が小さく、自覚症状がない場合は、手術の必要はありません。しかし、翼状片が徐々に大きくなり、異物感や充血などの症状が現れるようになった場合は、手術を検討する必要があります。


翼状片が角膜の中心に近づき、視力に影響を与えるようになった場合は、早めに手術を受けることをおすすめします。視力低下が進行すると、手術後の視力回復が難しくなることがあります。


また、翼状片が原因で、日常生活に支障をきたす場合も、手術を検討する理由となります。例えば、翼状片が大きくて見た目が気になる、コンタクトレンズが装用できないなどの場合は、手術を検討する価値があります。


手術のタイミングは、患者さんの年齢や全身状態なども考慮して決定されます。高齢者や、全身疾患のある方は、手術のリスクが高まる可能性があるため、慎重に判断する必要があります。手術を受けるかどうか迷っている場合は、複数の眼科医に相談し、意見を聞いてみることをおすすめします。

手術の方法

翼状片の手術には、いくつかの方法があります。代表的なものとしては、単純切除、自家結膜移植、羊膜移植などがあります。


単純切除は、翼状片を単純に切除する方法です。自家結膜移植は、翼状片を切除した後に、患者自身の結膜を採取して移植する方法です。再発率が低いですが、結膜を採取する際に、新たな傷跡が残るというデメリットもあります。羊膜移植は、翼状片を切除した後に、羊膜(ようまく)という特殊な膜を移植する方法です。羊膜は、抗炎症作用や創傷治癒促進作用があり、再発率を低く抑える効果が期待できます。また、自家結膜移植のように、新たな傷跡が残る心配もありません。


近年では、再生医療を用いた新しい手術法も開発されています。これらの手術法は、まだ研究段階ですが、将来的に翼状片治療の選択肢を広げる可能性を秘めています。

手術費用と期間

翼状片の手術費用は、手術方法や医療機関によって異なります。また、手術後の通院期間も個人差があります。事前に費用や期間について確認しておくことが大切です。


翼状片の手術は、保険適用となるため、自己負担額は3割負担となります。手術費用は、片眼あたり数万円程度が目安です。ただし、手術方法や医療機関によっては、費用が異なる場合があります。


手術費用以外にも、診察料、検査料、薬代などがかかります。これらの費用も考慮して、手術費用の総額を把握しておくようにしましょう。


手術後の通院期間は、通常、数週間から数ヶ月程度です。手術後、定期的に経過観察を受け、再発の兆候がないかを確認する必要があります。


通院頻度は、手術方法や患者さんの状態によって異なります。医師の指示に従って、適切な間隔で通院するようにしましょう。


手術を受ける医療機関を選ぶ際には、費用だけでなく、医師の経験や実績、医療設備の充実度なども考慮することが大切です。複数の医療機関を比較検討し、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。費用や期間について、事前にしっかりと確認しておくことで、安心して手術を受けることができます。

まとめ

翼状片は、放置すると視力低下を引き起こす可能性のある病気です。早期発見、早期治療が大切です。気になる症状がある場合は、早めに眼科医を受診しましょう。


翼状片は、紫外線、乾燥、ほこりなどが原因で発症することがあります。これらの要因を避けるために、日常生活で紫外線対策を徹底し、目の乾燥を防ぐように心がけましょう。


翼状片の治療法には、点眼薬による保存的治療と、手術療法があります。初期段階では、点眼薬で症状を抑えることができますが、進行すると手術が必要になることがあります。


手術のタイミングは、翼状片の進行度合い、自覚症状の程度、視力への影響などを考慮して決定されます。医師とよく相談し、最適なタイミングを見極めることが大切です。


手術後は、感染症予防のための点眼薬を使用し、目を保護する必要があります。また、再発のリスクがあるため、定期的な経過観察が重要です。翼状片について正しい知識を持ち、適切な対策を行うことで、健康な目を守りましょう。

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